来る者拒まず去る者追わず

 

「うわ、最低」

 

 

 

私は思わず言葉を漏らす。

 

 

 

「W最低Wねぇ…いいだろ?お互いフリーなんだし。

 

どっかのお嬢さんと違って結婚している人とは無いから安心して」

 

 

 

 

ニヤリと彼は笑う。

 

 

人の恋愛をとやかく言われたくないけど、それ以上に気になることがある。

 

 

 

 

「そのWお嬢さんWってやめてもらえません?」

 

 

 

 

10代でもないのに何故Wお嬢さんWと言われないといけないの?

 

 

まだW君Wと言われた時の方がマシ。

 

 

 

「何歳?」

 

 

「誕生日が来たら22歳」

 

 

 

そう言えば、彼は少し驚く。

 

 

 

「俺より10個も年下じゃん。どう考えたってお嬢さんだろ」

 

 

 

え、樋口さんって32歳ってこと?

 

 

見た感じ20代半ばくらいに見えるのにもう30代なんだ。

 

 

なんか意外…。

 

 

 

って、そんなのどうでも良くて…!

 

「樋口さんに話しかけられる度にお嬢さんとか呼ばれると余計腹が立つんでやめてください」

 

 

 

丁度、エレベーターの扉が開き私は歩き出す。

 

 

 

けど、エレベーターを降りたところで彼に腕を引かれた。

 

 

 

 

「何、俺の名前知ってるとか興味持った?」

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

持つわけないでしょ!

 

 

 

「昨日、一緒に食事してた人が呼んでたじゃないですか。

 

それに友人や先輩が言ってましたよ。市役所勤務の間宮さんと樋口さんはとてもおモテになるそうで」

 

 

 

 

トゲトゲとした言い方をすれば、納得したらしく「なるほどー」と言う。

 

 

 

 

「じゃあ、お嬢さん名前は?」

 

 

 

 

樋口さんはまだ私の腕を離してくれない。

 

 

その代わりに意味のない質問をされた。

 

「よく知りもしない人に名前を教えるほど私のガードは緩くないんで」

 

 

 

 

そう言って立ち去ろうとしたけど、私の腕は彼に掴まれていたため動こうにも動けない。

 

 

 

 

「樋口慧。5月12日生まれの32歳、牡牛座でB型。女の子は来る者拒まず去る者追わず。ただし10歳以上歳の離れた子は除外な」

 

 

 

「はい?」

 

 

 

ペラペラとよく息も吐かず言えたもんだ。

 

 

ポカンとしている私に樋口さんは

 

 

 

「俺のプチプロフィールを知ったんだから知り合いになるだろ?名前くらい教えろよ」

 

 

 

と、W当たり前だろWとでも言いたそうな顔をした。

 

 

 

数秒黙り込んだ私は樋口さんから視線を逸らし口を開く。

 

 

 

「三浦です」

 

 

 

それだけ言って、彼の手を振り払う。