出会いそして不倫

すると、テーブルに置いておいた私のスマホがメールを受信したらしく受信ランプが青く光る。

 

 

 

「あれ、珍しいね。スマホなんて滅多に持ってこないのに」

 

 

 

「今日は大事な連絡がくる日なんだ」

 

 

 

そう言ってスマホを手にする私。

 

 

こずえの言うとおり、私は普段からスマホなんて持ち歩かない。

 

 

社内用の携帯があるし、それで十分と思っているからスマホを家に忘れてくることが多々ある。

 

 

 

だけど、W今日Wは持ってきた。

 

 

 

「実家から?」

 

 

「うん、今度法事があってそのことについて」

 

 

 

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仕事終わったら連絡して。

 

────────────

 

 

 

法事なんて嘘。

 

そんなものの為に私がスマホを家から持ってくるわけない。

 

 

 

W今日Wだから持ってくるの。
──────
────────……

 

 

 

「5…4…3…2…1…よし、終了」

 

 

 

時計の針がきっちり17時を示すと、こずえは嬉しそうに立ち上がる。

 

 

それは私たちの仕事の終わりの合図。

 

 

「沙菜は帰らないの?」

 

 

 

定時にしっかり帰ろうとするこずえはもう帰りの支度を始めている。

 

 

 

「うん、あとこれだけやったら帰るから先に帰ってて」

 

 

「わかった。じゃあ、また明日ね」

 

 

 

「また明日ね」

 

 

帰りの支度を終えて、手を振って出て行く彼女の姿が見えなくなったら私はポケットからスマホを出す。

 

 

 

──────────

 

仕事終わりました。
3分したら会社出ます。

 

──────────

 

 

それだけ打って送信して、私はゆっくりと時間を稼ぐように帰る支度をする。

 

 

 

朝からウキウキして仕方なかった。

 

 

どれだけW今日Wが楽しみだったことか。

 

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了解。
いつもの所に車止めてる。

 

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W彼Wからの返事を見て、益々嬉しくなってたまらなく会いたくなる。

 

 

 

「お先に失礼します。お疲れ様です」

 

 

 

帰る支度を終えて、まだ残っている人たちに挨拶をして軽い足取りで待ち合わせ場所へ行く。

 

 

だけど、人目に触れないように細心の注意を払う。

 

 

会社の外に出て、少し歩いた所に1台の車が止まっている。

 

 

私はすぐにでも車に駆け寄りたい気持ちを抑え、見知った顔がないか確認する。

 

 

 

辺りを見回して、誰もいないことがわかると私は車に近づいた。

 

 

そして、助手席のドアを開ける。

 

 

 

「お疲れ様、沙菜」

 

 

 

運転席に座るW彼Wは私に優しく微笑んで言う。

 

 

 

私もそれに応えるようににっこりと笑う。

 

私には彼氏と呼べる人がいる。

 

 

だけど、どんなに懇願されても

 

 

W彼Wを紹介することは出来ない。

 

 

 

だって…彼は───

 

 

私の会社の取引先の人で

 

 

美人な奥さんがいて

 

 

幸せな家庭を持っている

 

 

 

 

 

「会いたかった──W村岡さんW」

 

 

 

 

 

これが私、三浦沙菜の抱える

 

誰にも言えない最低最悪の秘密。