ちょっと経ってからエレベーターの扉が開き、中へ入ろうと進むと私は先に乗っていた人を見て少し戸惑った。

 

 

 

「(……あ)」

 

 

 

だって、昨日4階から乗った男がいるんだから。

 

 

彼は私を見て軽く会釈をする。それに一応私も会釈をした。

 

 

 

「なぁ、あのさ」

 

 

 

突然、声をかけられてビクッと肩が上がる

 

 

 

「なん、ですか…」

 

 

何で話しかけられるのと思いビクビクしながら返事をする。

 

 

 

「エレベーターの中であんな淫らなことするのは駄目だろ。俺が乗らなかったらそのままヤる気だったわけ?」

 

 

ニヤッと笑った彼を見て私の心臓は猛スピードで動き出した。

 

 

 

「す、するわけないじゃないですか!」

 

 

 

そう私が大きな声を出せば丁度、1階に着いてエレベーターの扉が開く。

 

 

 

「そう?」

 

 

彼はそう言って私より先に歩き出した。

 

「あ、でもさ」

 

 

 

だけど、彼は足を止めて私の方を振り向く。

 

 

そして、ゆっくり私に近づいて

 

 

 

「奥さんいる人とWそういうことWはしない方がいいんじゃねーの?」

 

 

 

そう、小さく囁いた。

 

 

一瞬、時間が止まったかと思った。

 

 

 

彼は私から離れる。

 

 

でも私はその場から動けずにいた。

 

 

ただ心臓の音がずっとうるさいだけ。

 

 

 

「そりゃ、わかるよ。男は指輪をしていたけど、君はしていない。普通ペアリングなら女の方が率先してつけるだろ?仕事とか考えて外したらなら彼と会う前につけるだろ」

 

 

淡々と彼は私に説明し出す。

 

 

 

「それに夜中、コンビニ行った帰りにエレベーターに乗ろうとしたら君の彼とすれ違ったし。普通は泊まってくのに時計を見ながら急いでたから男には指輪の相手がいる…つまり、既婚者」

 

 

 

「っ」

 

 

 

何この男…。

 

「あ、別に脅してるわけじゃないから」

 

 

 

にっこり笑う彼に私はゆっくりと口を開く。

 

 

 

「…じゃあ、なんでそんなこと言うんですか」

 

 

 

脅すつもりがないなら別にわざわざ私に言う必要なんてないじゃない。

 

 

しかも、昨日が初対面だった私によく躊躇無く言えたもんだ。

 

 

 

「それもそうだな、何親切に言ってんだろ俺」

 

 

そう首を傾げながら彼は言う。

 

 

 

「ま、傷つかないようにな。お嬢さん」

 

 

 

彼は私の頭をこつんと軽く叩いてそのままエレベーターを後にした。

 

 

 

 

「何なの…あの人」

 

 

 

エレベーターに残された私は彼への不信感と不倫がバレたことで混乱せざるを得なかった。

 

 

 

 

 

───これが私と彼のエレベーターでの出会いと最悪な会話だった…。